インターナショナルCCSナレッジセンター: ペトラ・ノヴァのCO2回収システムの成果達成を発表

以下にベス (ハーディ)・ヴァリアホがインターナショナルCCSナレッジセンターを代表して発表した声明を掲載。


再掲 - ペトラ・ノヴァのCO2回収システムが成果を達成

サスカチュワン州レジャイナ, Aug. 20, 2020 (GLOBE NEWSWIRE) -- 最近、ペトラ・ノヴァ (Petra Nova) によるCO2回収貯留 (CCS) プロジェクトが一時停止されたとの報道があったことが懸念される。CCSを世界的に展開して二酸化炭素 (CO2) 排出量をすばやく有効に削減しようと取り組んでいるなか、この時点で停止されるプロジェクトがあるということは、特にCO2回収が成果を達成しているとき、CCSにとって一歩後退である。

NRGとJX日鉱日石エネルギー (JX Nippon) によるCCS事業は、テキサスにあるペトラ・ノヴァのW.A.パリッシュ発電所で実施されており、2016年にCCS事業を (スケジュール通りに予算内で) 成功裡に完了し、Power Engineering最優秀プロジェクト賞 (Project of the Year) (2017年) を受賞したばかりではなく、その後も順調に稼働を継続し、CO2排出量の90%を回収している。これは、自動車35万台の走行停止に相当する。i

そのため、ペトラ・ノヴァのCO2回収中止は憂慮すべき事態である。

環境に好ましくない。
進歩と革新にも悪影響を与える。

地球温暖化を1.5°Cに抑制するには、大量にCO2を排出する産業プロセスと発電プロセスの大規模な脱酸素化が必要である。この規模の排出削減を達成するには、セメントや鉄鋼などの工業工程、石炭や天然ガスのような発電を含む幅広い用途で商業規模のCCS展開を加速する必要がある。

世界のCO2排出量の32%が電力部門から

世界のCO2排出量の32%を電力部門だけで占めているいまが、展開可能で実証された気候対策の時期である。これは、再生可能エネルギーの利用促進が必要であり、水素、原子力、CCSの推進が求められることを意味する。CCSは、発電業界が世界的にCO2排出量を削減するための試金石となりうる。石炭業界では、CCSが重要な移行技術であり、比較的短期間のうちに展開され、実績を上げている。しかし、遅滞なく実施する必要があり、後退の猶予はない。

国際エネルギー機関 (International Energy Agency) (IEA) によると、CCSは世界的に年間2.4 Mtの発電容量を支えている。IEAの持続可能な開発シナリオでは、2040年までに年間1.5 GtのCCSによる発電が必要である。  ペトラ・ノヴァとバウンダリーダム3号機のCCS施設 (BD3) (カナダサスカチュワン州) は、世界的にもCCSを導入する二大石炭プラントとして、大量のCO2を回収しているが、ペトラ・ノヴァが稼働を一時中止したのに伴い、年間1.4 Mtの回収量が消えることになる。 ii

排出量削減には、今あるCCS施設がぜひとも必要である。
この教訓を生かして、CCS施設をさらに展開しなければならない。

ペトラ・ノヴァ停止の理由はCO2回収ではない

明らかにしておかなければならないのは、ペトラ・ノヴァプロジェクトの停止は、CO2回収プロセスにおいて何かが起こった、あるいは起こらなかったことの結果ではないということだ。そうでなくて、原油価格の下落がプロジェクトの石油生産を阻んでいるためである。

ペトラ・ノヴァは、石油増進回収 (EOR) プロジェクトとして設立された。ペトラ・ノヴァの事業モデルでは、所有企業がEORを通じて下流のCO2貯留に直接関与するため、石油市場価格が上流の運転コストとプロジェクト回収側の意思決定に影響する。

BD3は環境プロジェクトとして設立された。天然ガスへの転換コスト (現在のガス高値と比較) に基づき、カナダで近く施行される石炭規制に順守するため、BD3はEORへのCO2販売と貯留プロジェクトAquistoreiiiを推進した。

ペトラ・ノヴァのジョイントベンチャー事業モデルは、BD3では要素として含まれていない。BD3は、2014年にCCS施設として稼働を開始し、州内のトップ企業であるSaskPowerが所有し、66 km離れた油田のEOR下流CO2オフテーカーは、年間一定量のCO2購入契約を結ぶ独立系企業 (ホワイトキャップ・リソース (Whitecap Resources)) である。興味深いのは、Weyburn-Midale油田には、約20年間、EORを通じてCO2が貯留されており、現在までの貯留量は35 Mtを超える。

ペトラ・ノヴァのCO2回収プロセスの一時停止に伴い、CO2は現在、パリッシュ発電所から大気中へ排出されており、回収プラントは非稼働状態である。

大気中への排出を防ぐにはインセンティブが必要

排出量削減目標を達成するには、適切な政策を通じて、CCS技術などのクリーンエネルギーに多額の投資をする必要がある。持続可能な環境政策と結び付いたCCS展開を支援するバリューストリームとビジネスケースを確立することが重要である。

米国では、45Q税額控除を採用して、他国に先駆けてこれに取り組んでいる。この政策により、従来よりも迅速に展開できる体制が作られ、CCSの革新に政府からの助成金のようなインセンティブが用意されている。CO2 1トンの地下貯留に対して50ドル (約5,250円)、EORを含むCO2利用1トンに対して35ドル (約3,675円) が控除され、受け取り額に上限はない。現在27のプロジェクト (石炭関連) に適用されている45Q控除は、開発事業者にとって確実性を提供している。資格を得るには、プロジェクトで2023年までに工事を開始しなければならない。

ペトラ・ノヴァは45Q税額控除を申請しておらず (2016年の時点では税額が低かったため)、収益は石油の売上に頼っていた。ペトラ・ノヴァでの稼働成功は、CCSの成果を実証するものである。しかし、稼働が中止されたことで、CO2削減にはより大きな価値が必要であることが示される。この新バージョンのインセンティブがプロジェクトに提供されれば、経済の好転も見込まれる。

BD3は今後も主導的施設

カナダでは、様々な市場に石油を売り込む能力が限定されているため、米国よりも石油価格が低い。実際にカナダでは、今年3月に石油1バレルの価格がビール1パイントを下回ったiv。最近では、ウェスト・テキサス・インターミディエイト (West Texas Intermediate) (WTI) の石油価格がメディアで報道される世界基準価格で、2020年6月平均で38.31ドル (約4,023円) であった (2019年比で29.9%低下)。同じ時期、アルバータ州石油生産者から入手したウェスタン・カナダ・セレクト (Western Canada Select) (WCS)価格は、平均33.97ドル (約3,567円) であった。2020年6月のWTIとWCSの価格差は4.34ドル (約456円) であったv

カナダにおける石油価格にも関わらず、BD3は石油価格に基づいて回収を停止する計画を示してこなかった。実際、BD3 CO2のメインオフテーカーであるホワイトキャップは、CO2をもっと欲しいと公表していた。同社は、現在の契約のほか、最低15年間のCO2供給を希望している。vi

BD3では、現在もCO2回収を継続している。7月中、BD3では75,503トンのCO2を回収した。CCSが稼働中、1日の平均回収量は2,435トン、1日の最大回収量は2,627トンであった。CCS施設は1か月の99.8%稼働していたが、水冷の問題でブースターファンが一時停止したとき1.5時間稼働停止したvii

ベス (ハーディ)・ヴァリアホ (Beth (Hardy) Valiaho) は、インターナショナルCCSナレッジセンター (International CCS Knowledge Centre) の戦略および出資者関係担当バイスプレジデントである。同センターは、世界の政策立案者と投資家を代表する機関で、エネルギー、環境、社会的影響のバランスを考慮して、CCS展開のエンゲージメントと理解を促進している。

インターナショナルCCSナレッジセンター (ナレッジセンター) について: 大規模なCCSの世界的な理解と展開を促進して、世界的にGHG排出量を削減するという使命の下、ナレッジセンター (Knowledge Centre) は、完全統合型のバウンダリーダム3号機CCS施設および包括的な第2世代のCCS調査 (Shand調査) から得られた基礎学習を通して大規模CCSプロジェクトとCCS最適化を実施するノウハウを提供している。独立委員会の指揮の下、2016年より運営されるナレッジセンターは、BHPとSaskPowerにより設立された。詳細情報の参照先: https://ccsknowledge.com/

報道関係者向けの問い合わせ先

インターナショナルCCSナレッジセンター
ジョディ・ウーラム (Jodi Woollam)
広報および報道関係担当責任者
jwoollam@ccsknowledge.com
電話: +1-306-565-5956/モバイル:+1-306-520-3710

ccsknowledge.com
Twitter: @CCSKnowledge
198 - 10 Research Drive Regina, SK S4S 7J7 Canada

この発表に関する写真はこちらで入手可能: https://www.globenewswire.com/NewsRoom/AttachmentNg/c998773d-1393-4504-a03f-c59280066eb0


i NRGウェブサイト: https://www.nrg.com/case-studies/petra-nova.html

ii IEA持続可能な開発シナリオ: https://www.iea.org/reports/world-energy-model/sustainable-development-scenario

iii カナダ石炭規制: Reduction of Carbon Dioxide Emissions from Coal-fired Generation of Electricity Regulations (石炭火力発電所からの二酸化炭素排出量削減規制)

ivCNBCマーケット情報“A barrel of oil is now cheaper than a pint of beer in Canada” (カナダで石油1バレルの価格がビール1パイントを下回る)、30MAR20https://www.cnbc.com/2020/03/30/a-barrel-of-oil-is-now-cheaper-than-a-pint-of-beer-in-canada.html

v アルバータ州政府、オイル価格、24JUL20https://economicdashboard.alberta.ca/OilPrice#:~:text=PUBLISHED%20-%20Nov%2025%2C%202019.%20The%20West%20Texas,oil%2C%20averaged%20US%2441.96%20a%20barrel%20in%20October%202019%2C

vi Pipelineニュース、Whitecap wants more CO2 for Weyburn EOR (ホワイトキャップ、Weyburn EORへのCO2供給増を希望)、24SEP19  https://www.pipelinenews.ca/news/local-news/whitecap-wants-more-co2-for-the-weyburn-unit-1.23954882

vii SaskPower、BD3ステータス最新情報: 2020年7月、12AUG20、https://www.saskpower.com/about-us/our-company/blog/bd3-status-update-july-2020